平成23年特許法等の改正について~1~

今日味新深(No.42:2012/1/16)

 プロパテント化(特許権重視の考え方や政策)に伴い、近年知的財産権法の改正が頻繁に行われています。以下に、改正の趣旨と内容につき企業活動の上で重要なポイントを紹介します。

<法律改正の趣旨>

 近年、社外技術を活用して研究開発や製品化を行うオープン・イノベーションが進展しています。このような環境変化に対応し、ライセンス契約の保護強化や共同研究等における発明者保護を図り、またイノベーションの裾野を広げる等の観点からユーザーの利便性を向上させるとともに、知的財産を巡る紛争を迅速・効率的に解決するために審判制度が見直されました。

<法律改正の内容 その1>

①通常実施権者の第三者への対抗制度の見直し(特許・実用新案・意匠)

(ア)従来の問題点

 特許権者(A社)は自分の特許を別の誰か(例えばB社)に使わせることができます。それはライセンス契約を結ぶことで行われます。ところが特許権者A社がライセンス契約の後に自分の特許権を第三者(C社)へ譲渡することがあります。この時、もしC社が「この特許権は我が社のものになった。もうB社には使わせない。」と主張したらどうなるでしょう。ここで問題が起きます。
改正前の特許法では、B社が『通常実施権の登録をしたときのみ』C社に対して権利を主張できる(法的には「対抗できる」といいます)制度となっていました。ところが実際には特許権者A社がそもそもこの通常実施権の登録に応じないことが少なくありませんでした。このためB社はライセンス契約があるにもかかわらず不安定な立場に立たされる契約内容となることがあったのです。これでは社外技術を活用して研究開発や製品化を行うオープンイノベーションが有効に作用する環境にはマイナスです。

(イ)改正点

 そこで特許法改正後は特許権者A社とライセンス契約したB社は、通常実施権の登録をしていなくても、「A社とのライセンス契約があるのでこの特許は我が社が使える」と、C社に対して主張できるようになりました。これを『当然対抗制度』といいます。

②無効審判確定審決の第三者への効力の廃止(特許・実用新案・意匠・商標)

(ア)従来の問題点

ある特許に対して無効審判請求は誰でもできることになっています。仮に説明下手なAさんが「この特許は無効だ。証拠は○年○月○日の論文に特許と同じ内容が出ていてこれは特許出願より前の論文だからこの特許には新規性がない。」と主張したとしましょう。しかしAさんの説明が下手でこの主張が認められないこともありえます。しかし、説明上手なBさんなら同一の証拠を基にしていても無効の審決を得ることができたかもしれません。
改正前の特許法では一度出てしまった審決はAさん以外のBさんのような第三者に対しても有効だとされていました。つまり以前の審判に採用された同一の事実及び証拠に基づく証拠によって、同一の特許の無効を主張できなかったわけです(別の事実および証拠があれば無効を主張することはできます)。

(イ)改正点

 そこで特許法改正後は、特許庁による無効審判の審決の確定後に、当事者及び参加者以外の第三者が、同一の事実及び証拠に基づいて審判請求できるようになりました。

次回に続く・・・