新しい固定価格買い取り制度による国内太陽電池市場の動き

今日味新深(No.67:2013/4/5)

 ドイツは太陽光発電電力の固定価格買い取り制度(FIT:Feed-in Tariff)により大規模太陽光発電システムを大量に導入して欧州の太陽電池市場を牽引してきました。

 ところが2011年以降、固定価格買い取り価格が引き下げられて太陽光発電事業への投資意欲が減退し、供給過剰により太陽光発電システムの価格は、2008年当時6~7 USドル/Wであったものが現在2~3USドル/Wにまで低下しています。
 この価格は、ドイツの既存の住宅用電力料金を下回るレベル(これを”Grid Parity”と言います)に達しており、設置場所さえあれば住宅に太陽電池を導入して、その電気を自宅で消費した方が電力会社より購入するより得という状態になりました。
 すなわち太陽電池市場が政府の支援策がなくても自立できる市場になったと言えます。

 欧州における太陽光発電システム中の太陽電池モジュール価格は、2008年には4USドル/Wでしたが、中国や台湾メーカの低価格品の大量輸入により急激に下がり続け、2012年初頭には0.9USドル/Wとリーマンショック前の1/4以下になりました。
 これまでは、太陽光発電システム価格のボトルネックは結晶シリコン系太陽電池の原料となる高純度シリコン材料でしたが、中国、米国や韓国の大規模高純度シリコン工場が本格稼動を始めて供給過剰になったことが、太陽電池モジュール価格を一気に押し下げる要因になっています。
 輸入製品による急激な価格低下は、欧州の太陽電池メーカの経営を悪化させ、2008年当時世界一の生産量を誇ったQ-Cells(独)でさえ経営破綻する結果を招きました。

 このように、FITは太陽光発電事業者への補助制度であり、グローバルなメーカを含めた太陽電池産業の育成制度となり、必ずしも自国メーカのみを育成するものではないことがわかります。

 一方日本国内では、一昨年8月に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度のための法律「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が成立し、作年の7月から施行されました。
 新しい買い取り制度では、10kW以上のシステムについては規模の上限を設けず、住宅用以外の産業用の大規模太陽光発電システムで発電した電力も含めて、全量を電力会社が高い価格で買い取り、既存の発電コストより高い分だけ電力価格に上乗せされます。
 初年度の電力買い取り価格は、太陽光発電システム導入意欲を刺激するように、内部収益率(IRR)6%を確保できるように42円/kWh(買い取り期間:10kW以上は20年間、10kW未満は10年間)と設定されました。

 日本国内の太陽電池市場は、これまで住宅用中心でしたが、新しい買い取り制度がスタートしたことにより、大規模商業施設や工場向けなどの産業用、発電所用の市場が立ち上がり始めました。最近では、自治体が先導して屋根貸しを斡旋したり、遊休地での太陽光発電事業者を募集したりする動きもでてきており、2012年度は昨年度の約1.5倍、2GWの導入量が見込まれています。
 日本国内の太陽光発電システムの価格は、旺盛な需要の影響で、現在5USドル/W程度と、欧州に比べて高めに推移してきましたが、中国等からの大量輸入により今後は急激に低下し始めると予想されます。
 システム価格が下がれば、それに追随して買い取り価格も引き下げられ、2013年度の買い取り価格は38円/kWh程度にまで引き下げられる予定です。

 太陽光発電システムを導入するタイミングは重要な経営判断マターになると思われるため、弊社では、世界の太陽電池産業と太陽光発電事業の動向を継続してフォローします。