次世代自動車の技術動向

今日味新深(No.62:2013/1/8)

 現在、自動車分野では、経済産業省が「ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)」、「電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)」、「燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)」、「クリーンディーゼル自動車」の4種類を次世代自動車と位置付け、実用化を推進しています。ここでは、BEVとFCVの状況を紹介します。

 BEVは蓄電した電気を主な動力源とする自動車です。動力源蓄電池としては、より高容量、長寿命が特徴のリチウムイオン電池(LIB)が搭載されるようになっています。動力源蓄電池の主な課題は、現LIBに対しては「安全性の確保」であり、もう一つが「より一層の高エネルギー密度蓄電池の開発」です。車載用LIBは大型蓄電池であり、中国などではBEV(バス、タクシー)の発煙、炎上事故が相次いでいることもあり、高度な安全性が求められます。現在、信頼性の高い日本製LIBが高シェアを獲得しています。一方、LIBの高エネルギー密度化は自動車の走行距離に直結する課題です。現状のLIBではエネルギー密度250 Wh/kgが限界ラインと云われており、実用化しているBEVの走行距離に換算すると210 kmに相当します。この限界ラインを超えるためには新規な蓄電池システムの開発が必要と認識されており、走行距離500 kmを目標に新電池反応設計、新材料開発などが精力的に進められています。HEV・BEVに対する蓄電池として、2030年にエネルギー密度700 Wh/kgの車載用蓄電池実現に向けた国家プロジェクトが進められています。

 走行距離確保の視点からは、BEVよりもFCV(走行距離:500~600 km超)が有利との見方があります。このためフォード、GM/オペル、ダイムラーAG、ルノー・日産アライアンス、トヨタ自動車、ホンダ、ヒュンダイモーター、起亜自動車の8社がFCVに参入しています。FCVは水素等の燃料を電気に変換して動力源とする自動車です。現在、FCVは製造原価が1億円程度することから、官公庁や一部法人にリース販売されているのみです。普及には大幅なコスト低減が必須であるとともに、合わせて水素等インフラも同時に普及させる必要があります。

 FCCJ(燃料電池実用化推進協議会)は2015年にFCVと水素インフラの普及開始を目指しており、それに向けたシナリオを提案しています。これを受けて自動車メーカーはFCVの低コスト化を図るべく、特に燃料電池スタック(現状価格:200~300万円)、高圧水素タンク(現状価格:500万円)のコスト低減検討を進めています。また、水素ステーションは現在日本に16箇所ありますが、建設費に6億円以上かかるため、これを2億円以下に抑えることが計画されています。FCCJは、2025年にFCV:200万台、水素ステーション:1000箇所を目指すとしています。

 なお、水素ステーション建設の高コスト化は国の厳しい規制が大きな要因であるため、FCVの普及事業を阻害している規制の再点検を行うことが2010年6月18日に閣議決定されました。この決定を受けて、関係省庁(経済産業省、国土交通省、消防庁)が関連法規(高圧ガス保安法、建築基準法、消防法)の再点検を行っており、具体的な工程表も作成されています。工程表では主な規制の見直し可否を2012年度末までに結論づけるとしていますが、水素ガス規制の所管省庁が原子力安全保安院ということもあり、規制見直しのスケジュールは遅れているようです。

 次世代自動車の在り方に、二次電池、燃料電池とも今後どのように技術開発が進展していくかが大きな影響を与えます。当社ではこれらの技術開発動向調査を続けています。