欧州鉄鋼業界の上工程の動向

今日味新深(No.66:2013/3/15)

 弊社では鉄鋼業界についてもウォッチを継続しております。今回は欧州鉄鋼業界の上工程の動向について現状を報告します。

 欧州の鉄鋼業は、2006年のミッタルによるアルセロール買収、2007年のタタによるコーラス買収などの業界再編の後、2008年のリーマンショック後の欧州経済危機以後、業績悪化に苦しんでいます。
 例えば、アルセロール・ミッタルは、粗鋼生産量が1億トンを割り続けたままで、高炉や電炉などの休止を強いられ続けています。

 一方、自社生産鉄鉱石の自給率目標を70%に資源対策を強化しており、原料価格高騰においてもより収益性の良い事業への転換を進めています。
 ティッセン・クルップは、低コストの鉄源を北米の高級鋼市場開拓に活用するという垂直分業モデルである米州事業を立ち上げ、2007年にブラジルに年産500万トンのスラブ一貫製鉄所を新設しましたが、経営破綻しました。

 他方、技術開発面においては、欧州の研究開発基金を活用した2007~2013年の第7次フレームワークプログラム(FP7)が進行中です。
 その中では石炭・鉄鋼部門の補助金総額約220億円は、石炭・コークス関連に14件(約11億円)、塊成化・製銑関連に10件(約20億円)の補助金が補助率2/3程度で支出されています。
 個々のプロジェクトには大学、企業が平均6社程度参加し、産学共同研究を確実に実施しています。

 特にCO2削減技術に関しては、日本のナショプロである水素利用製鉄法(COURSE50)に対抗する欧州全鉄鋼企業参画のULCOSプロジェクトを立ち上げ、高炉炉頂ガス循環や溶融還元法(Hisarmaプロセス)、天然ガスまたは水素利用製鉄法などの開発を実施しています。
 また、石炭乾留研究所(CPM)、鉄鋼研究センター(旧IRSID、MEFOS等)などは、規模は縮小されているもののECレベルや企業レベルで維持されており、原燃料品質管理の自動化、システム化、試験高炉操業など特徴ある開発成果を上げています。
 さらに、国際学会(SCANMET等)も継続的に実施し、各国の情報も収集しています。欧州の技術開発情報がミッタル、タタの社内を通じて、米国、ブラジル、インドなどで共有化されていくであろうことに留意する必要があります。

 今後とも、上工程に限らず、技術開発情報収集先として欧州は依然として重要であり、継続的なコンタクト、定点的な情報収集を続けることは極めて重要と考えています。