水銀の産業への影響(水銀を巡る国際的な動向)

今日味新深(No.34:2011/08/05)

 国際的な水銀管理に関し、2009年2月の国連環境計画(UNEP)第25回管理理事会において、水銀によるリスク削減のための法的拘束力のある文書(=条約)を制定すること、そのための政府間交渉委員会(INC:Intergovernmental Negotiating Committees)を設置して2010年までに交渉を開始し、2013年までのとりまとめを目指すことが決定された。

 その後、2010年6月の第1回INC(INC1、ストックホルム開催)を皮切りに条約交渉が開始され、2011年1月に千葉市幕張で開催されたINC2においては、INC3(本年10月末ナイロビ開催)に向けてUNEP事務局が条約の案文を作成することが合意される等、交渉が進展しているところです。その条約の素案が2010年10月にUNEP事務局より公表され、INC2では各国・地域が素案に対して様々な意見を述べています。

この素案の中で、注目すべき二つの点を紹介します。一つは、大気、水、土壌への水銀放出の削減措置で、条約の“附属書E”に掲げられた発生源分野への対応です。

附属書Eには、“石炭火力発電所および工業用ボイラー、非鉄金属生産施設、廃棄物焼却施設、セメント生産工場”が掲載されています。

素案では、“これらの分野からの大気への水銀排出を削減し、可能であれば廃絶する。”また、“新規の排出源について、各締約国は、ある期限内に、BAT (Best Available Technology:利用可能な最良の技術)の使用を義務づけ、BEP((Best Environmental Practice:環境のための最良の慣行)」を推進する”とし、“既存の排出源についても各締約国はBATを使用しBEPを推進する”と記載しています。さらに、「重大な水銀総排出量」を有する締約国の具体的な対応として“国家目標をUNEP事務局に提出し、次の締約国会議で検討できるようにし、かつ国家行動計画を立案する”ことを求める内容となっています。もし、素案が通れば、日本も総排出量の削減に向けた対策を行うこととなり、附属書記載分野では対応を求められることになります。

もう一つは、水銀添加製品の扱いです。素案では“附属書C”に掲げられていない限り許可される場合(ポジティブリスト方式)と、掲げられていない限り許可されない場合(ネガティブリスト方式)の考え方が議論されています。附属書Cには、「電池、計測機器、電気スイッチ・リレー、水銀ランプ、歯科用アマルガム」が掲載され、素案がこのまま認められれば製造、流通、販売や輸入に関する規制(禁止も含めて)を受ける可能性がありますので、これらの水銀を用いた製品や部品を組み込んだ最終製品(例えば液晶ディスプレイを有する機械)を扱う場合は、今後の動きに留意する必要があると考えられます。

弊社は、今年度も経済産業省から委託を受けて、INC3への日本政府代表団に参加するとともに本分野の情報を収集していきます。