車載用電池を巡る国際標準化の動き

今日味新深(No.52:2012/7/6)

 ガソリンエンジンで走る従来車に対して、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)、クリーンディーゼル自動車などは次世代自動車と位置づけられ、日本政府はこの普及を推進しています。これら次世代自動車の中で、HEVは順調に保有台数を伸ばしており、2010年に100万台を突破しました。車載用電池の高性能化も進み、従来のニッケル水素電池に替わって高容量、小型軽量のリチウムイオン電池(LIB:Lithium Ion Battery)が搭載されるようになっています。トヨタ自動車のプリウスα、日産自動車のリーフ、三菱自動車のアイ・ミーブ、GMのボルト、ダイムラーのベンツSクラスなどにはLIBが搭載されています。

 このような状況の中で、日本では次世代自動車用電池としてのLIBの標準化案を作成し、国際標準化を目指す活動が国家プロジェクトとして実行されています。電動車両の国際標準に関してはISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)の二つの認証機構がありますが、ドイツがISO/TC22(自動車)/SC21(電動車両:BEV、HEV、FCV)に車載用LIBの試験方法を新規提案したことをきっかけに、日本も独自に国際標準化を指向する動きを行うようになりました。

 ドイツ提案は電池セルからパックまでを対象とした試験標準であり、試験方法から試験結果の判定基準まで記載されています。認証行為も含まれており、この基準に合格した製品(電池)を電池メーカーが供給することを規定しています。ドイツは自動車強国ですが、国内に電池産業がないことから、あくまでも電池ユーザーの立場で標準化案を提案しています。

 日本は、試験標準は電池がある一定レベルの性能を有することを評価できる内容にとどめるべきとしており、評価結果の良否は自動車メーカーが判断すべきものである(判定基準を設けない)と主張しています。日本も自動車強国ですが、国内に電池産業およびその周辺産業を多く抱えているため、電池メーカーと電池ユーザーの両方の立場で標準化を進めたいというのが日本のスタンスです。ドイツとの交渉の結果、この日本のスタンスは認められ、ISOへの標準化案に反映されました。

 また日本はISOへのドイツ提案は電池システムに関するものであると位置づけ、電池セル単体の標準化をIECで実施するという作戦を立て、IEC/TC21/SC21A(小型二次電池)/TC69(電気自動車)JWG(LIBセル:性能・安全)に標準化の新規提案を行いました。しかしながらその後、ドイツ、フランスからも車載用LIBに関する新規提案がなされました。

 IECとISOの関係者で調整会議が行われ、その結果、車載用LIBセルの標準化は日本案をベースに、車載用以外の大型LIBセルの標準化はドイツ・フランス案をベースに検討していくことが決定されました。このようにLIBの標準化は、日本とドイツがお互いの意見の相違を認めた上で、お互いが妥協できるところに落ち着いたといえます。

 車載用LIBの標準化案は現在審議中ですが、電動二輪車用LIBに関するISO正式規格はまもなく発行されます。近年は各国のエネルギー政策、産業政策を色濃く反映した国際標準化競争の時代を迎えており、これら標準化の成否は日本の産業に大きな影響を与えかねません。

 当社では今後とも車載用LIBの標準化の推移を注視していきたいと考えています。