韓国における営業秘密保護

今日味新深(No.72:2013/7/1)

 韓国へ進出した日本企業又は韓国企業と取引する日本企業にとって、韓国における営業秘密保護の内容を理解することは事業展開上、避けて通れない必須事項です。

 そこで本稿では、韓国法の下で営業秘密の保護を受けるための要件および留意事項についてご紹介します。

1. 韓国法で定める営業秘密の定義

日本の営業秘密とほぼ同じ内容であり、次の三つの要件の全てが備わっているものが営業秘密として保護されます。

  • 公然と知られていないもの:その情報が不特定多数の人に知られていないために保有者を通さなくてはその情報を通常入手できないものをいいます。
  • 独立した経済的価値を有するもの:その情報の保有者がその情報の使用によって競争者に対して競争上の利益を得ることができるか、又はその情報の取得や開発のためにかなりの費用や努力が必要なものをいいます。
    例えば、生産方法、販売方法、その他の営業活動に有用な技術上又は経営上の情報がこれに該当します。反面、企業が脱税や、有害物質の垂れ流しを隠していたとしても、そのような情報は営業秘密として保護の対象にはなりません。
  • 相当な努力によって秘密として維持・管理されたもの:韓国の裁判例では、この要件が欠如して原告が敗訴した事例が多々あります。その中の一つが次の事例です。

【被告の行った行為】

・原告会社を退職した被告が原告会社在職時に自分が作成した証券分析プログラムのソースコードを複写して退職時にこれを持ち出した。
・被告は原告会社への入社、退職時において、秘密保持誓約書を原告会社へ提出していた。

【韓国裁判所の判断】

・裁判所は、被告が原告会社に秘密保持誓約書を提出していたとしても、原告会社の以下のような秘密情報管理の実態では、相当な努力をして前記プログラムを営業秘密として維持・管理していなかったと認定し、前記プログラムは保護されるべき営業秘密では無いと判断した。

1)被告が原告会社のファイルサーバに自由にアクセスできていた。
2)原告会社サーバ内の情報を特に制限もなく誰でも閲覧・複写が可能であった。
3)誰でも自由に原告会社サーバ内のファイルを複写することができ、且つこの複写した媒体をいつでも搬出することができた。

2.留意すべき事項

 営業秘密保護のポイントは、上記の三要件のうちの要件、秘密情報を相当な努力をもって、維持・管理しているかどうかに係っています。

 社員からの秘密保持誓約書の提出は最低限の条件に過ぎず、企業が秘密情報の管理に真剣に取り組んでいる実態が有るか否かが、ポイントになります。

 これは韓国への進出の有無に関わらず、日本国内においても重要な点で、上記裁判例のような秘密情報管理の実態は無いか、今一度自社の状況を再確認戴く時の参考にして戴ければと思います。