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洋上風力発電が生む新たな事業機会

今日味新深(No.71:2013/6/11)

 増加基調にある再生可能エネルギーは、従来の火力や原子力発電と同等の存在になり得るかどうかに関しては常に疑問の声もあります。しかし、ここに来て風力発電が群を抜いて着目されています。

 わが国では、FIT(Feed-in Tariff)制度による買い取り価格(太陽光発電42円/kWh、風力発電23円/kWh)により太陽光発電の導入が先行していますが、風車1基あたりの大型化技術が進み、経済性が向上を続け、加えて洋上も想定すると大きな導入規模が見込めるようになってきており、潜在的発電ポテンシャルでは風力発電が勝るとの見解に変わってきています。

 環境省試算では風力発電導入可能量は188GWと太陽光の13倍であり、経済性、環境影響等から浮体式洋上風力発電を再生可能エネルギーの中核として積極的に推進する方針を打ち出し、これに呼応する形で、経済産業省は太陽光発電引き取り価格を38円/kWhへ引き下げ、さらに洋上風力発電引き取り優遇価格の新設を検討しています。

 洋上風力発電は陸上に比べると設置コストが高く経済的に不利に見えますが、洋上では陸上での輸送制限などの問題が緩和され、大型の風力発電装置が設置可能なこと、大型になれば上空の安定した強い風を受けることができ、発電効率を大きく改善できるなど有利な点があります。
 風力発電装置本体も大型化するほどkWあたりの設備コストは下がるので、洋上風力発電コストと陸上のそれを比較すると、仮に設置費用が余計にかかってもトータルの経済性はかなりリカバーできるという側面があり、洋上風力発電装置の普及に大型化技術の開発は必須の要件になります。
 政府・経済産業省・環境省は福島県いわき沖、長崎県五島列島沖などで政府予算によるわが国の周辺海域に適した浮体式洋上風力発電超大型化技術開発を進めており、いわき沖で開発中の7MW機(ブレード径165m、ハブ高さMSL+110m、浮体総排水量18,700t)は世界最大規模となります。

 産業政策面では、構成部品点数が2万点弱の金属/非金属/複合素材から機械/電子部品、システム、海上据え付け・メンテナンス等多岐にわたる企業群による新産業の創出が期待され、鋼材使用量も英国洋上風力ラウンド1~3事業では約2,800万トン(当社推定700トン/MWとして)と膨大です。
 洋上風力発電による電力供給は、20年以上にわたるメンテナンスを含めた長期安定操業に基づく大規模発電事業における経済性が追求されることより、企業としての総合力が求められることから、従来の風車メーカーへの委託から、三菱重工、日立製作所、GE、SIEAMENS等の重電機メーカーへの委託へと変化するといわれています。これは世界的にも従来の風力発電設備産業の構造が変化することを意味します。

 一方、我が国において規制改革により風力発電設備建設に必要な環境アセス期間短縮の動きがあるとは言え、これから計画される大型事業が具体化するのは概ね3年後からと想定されています。
 こうしたなか、弊社では、風力発電事業分野におけるビジネスチャンスの有無などの視点から、激変する技術動向、ビジネス環境、規格制定動向のウォッチを続けております。

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